昔のF1の映像や話題に触れたとき、
ふと、こんなことを思う瞬間はないでしょうか。
「前のF1のほうが、好きだった気がする」
セナとプロストの激しい対立。
シューマッハが圧倒的だった時代。
あるいは、夜遅くまで地上波でレースを観ていた頃の記憶。
今のF1がつまらない、というわけではない。
でも、どこか違う。
あの頃と同じ熱量では観られていない気がする。
そう感じてしまうと、
「懐古主義なのかな」とか
「時代についていけていないのかな」と
少し引け目を感じてしまうこともあります。
けれど、
昔のF1と比べてしまう感覚は、
決して特別なものではありません。
この感情は、
F1を長く、真剣に観てきた人ほど
自然に抱きやすいものでもあります。
この記事では、
「前のF1のほうが好きだった気がする」
そう思ってしまうその瞬間について、
少しだけ立ち止まって考えてみたいと思います。
今のF1をどう評価するか、ではなく、
そう感じる自分を、どう受け止めるか。
そんな話です。
昔のF1を思い出すと、少し物足りなく感じる
昔のF1を思い出すとき、
多くの人が思い浮かべるのは、
レース結果や記録そのものではなく、
そのときに感じていた「熱」や「緊張感」ではないでしょうか。
ドライバー同士の関係が分かりやすく、
誰と誰がぶつかっているのかが、ひと目で伝わってくる。
勝つことへの執念や、感情のぶつかり合いが、
画面越しでもはっきり感じられた。
レースを観ること自体が、
少し身構えるような体験だった人もいると思います。
何が起きるか分からない。
危うさも含めて、目を離せない時間だった。
今のF1を観たとき、
その記憶と無意識に比べてしまうと、
どこか物足りなく感じる瞬間があります。
レースは洗練され、
安全性や戦略性は大きく進化しました。
それは間違いなく、良い変化です。
それでも、
かつて感じていたような「剥き出しの緊張感」や
感情が前面に出る瞬間が少なくなったように感じると、
「前のF1のほうが好きだった気がする」
という思いが、ふと浮かんでくることがあります。
それは、
今のF1が劣っているという評価ではなく、
記憶の中に残っている体験とのズレが、
そう感じさせているのかもしれません。
F1は変わったし、観る側も変わっている
F1が昔と同じでないのは、確かです。
レギュレーションも、技術も、運営の考え方も変わりました。
安全性は大きく向上し、
レースはより管理され、戦略性の高いスポーツになっています。
チームとしての完成度が重視され、
個人の衝動や危うさが前面に出る場面は、少なくなりました。
でも、変わったのはF1だけではありません。
観ている私たち自身も、
あの頃とは同じ場所に立っていないはずです。
年齢を重ね、
仕事や家庭、日々の責任が増え、
レースを観るときの集中力や気持ちの向け方も変わっていきます。
昔は、
レースが生活の中心に近い位置にあったかもしれません。
今は、数ある関心事のひとつになっている。
それだけでも、感じ方は大きく変わります。
さらに、
「初めてF1を観たとき」の新鮮さは、
どうしても一度きりの体験です。
どれだけ面白いレースでも、
すでに多くを知っている状態では、
同じ驚きや衝撃を感じるのは難しくなります。
だから、
今のF1を観て、
昔ほど心が動かないと感じるのは、
必ずしも競技の質の問題ではありません。
F1が変わり、
そして、観る側も変わってきた。
その重なりの中で生まれる違和感が、
「前のF1のほうが好きだった気がする」
という感情につながっているのではないでしょうか。
昔のF1が好きだった気持ちは、今もそのままでいい
「前のF1のほうが好きだった気がする」
そう感じることは、
今のF1を否定することと、必ずしも同じではありません。
あの頃のF1に心を動かされた。
夢中になって観ていた時間があった。
それは、事実として残っています。
その記憶は、
今のF1をどう評価するかとは、別の場所にあります。
無理に
「今のF1も面白いはずだ」と言い聞かせる必要もなければ、
逆に
「昔のF1しか認めない」と決める必要もありません。
昔のF1が好きだった、という感情を持ったまま、
今のF1とは少し距離を置いていてもいい。
たまにハイライトを見るだけでもいいし、
話題になったレースだけ触れてもいい。
F1との関係は、
一直線で続けなければいけないものではありません。
昔のF1を大切に思う気持ちがあるからこそ、
今の変化に違和感を覚える。
それは、F1をちゃんと観てきた人だからこそ生まれる感情です。
その気持ちを抱えたままでも、
F1ファンでい続けることはできます。
「前のF1のほうが好きだった気がする」
そう思う瞬間があっても、
それは終わりではなく、
F1との関係が少し形を変え、
新しく始まったただけなのかもしれません。
まとめ
「前のF1のほうが好きだった気がする」
そう感じる瞬間があっても、
それは懐古でも、否定でもありません。
F1は変わってきました。
同時に、観ている私たちの立場や、時間の使い方、
レースとの向き合い方も変わっています。
昔のF1に強く心を動かされた経験があるからこそ、
今のF1に違和感を覚えることもある。
それは、ごく自然なことです。
無理に今のF1を好きにならなくていい。
かといって、昔のF1だけに留まる必要もありません。
思い出の中のF1を大切にしながら、
今のF1とは、少し距離を取って付き合ってもいい。
話題になったレースだけ触れるのもいいし、
何年か離れる時間があってもいい。
F1との関係は、
いつも同じ形で続けなくていいものです。
「前のF1のほうが好きだった気がする」
そう思う自分を、否定しなくていい。
それもまた、
F1を好きだった時間があった証だと思います。
もし、
「前のF1のほうが好きだった気がする」
と感じながら、
同時に「今は、前ほど観ていない自分」にも気づいているなら、
そんな気持ちについて書いた記事もあります。

